――亜依――



「別れよう」

最初に口を開いたのは

優喜だった。

鼓動が早くなる。


―――ここは、私の部屋。

いつもは安心出来るこの部屋も

今日は空気が重い。

優喜、私…

まだ別れたくないよ……。

胸が締め付けられる様な、思い。


「……分かった」


……本当は

分かってなんかない。

まただ。

また私の、悪い癖。

私は、素直に気持ちを伝える事が

……出来ない。

昔からそう。

こんな事を

何回繰り返して来ただろう。

その度に、人を傷つけ、自分も苦しみ……

その繰り返し。

今だって……

本当はもっと優喜と一緒にいたい。

もっと愛したい。

愛されたい。

まだキスですら……。


「じゃ、帰るわ」

優喜が立ち上げる。

行かないで。

ずっと傍にいてよ……。

……でも、言葉に出せない。


―――バタン―――


別れの音。

優喜は、ドアの向こう側に消えていった。

背中を見つめる事しか出来ない、私。

もうこの部屋に、優喜は来ない。

何やってんだろ。

私……。