「愛原……」
「あのね、その子、タマゴちゃんの子供なんだって。そっくりだよね」
そう伝えると、大神君は目を丸くして二匹を見比べる。
やがて納得したようにニッコリと笑った。
「ありがとう。愛原のおかげで、またコイツと……コイツらと会えた」
「ううん、お礼を言わなきゃいけないのは私の方だよ。大神君のおかげでいろいろ変われたから」
「それは、愛原が頑張ったからだろ?」
何かが吹っ切れたように勢いよく立ち上がった大神君は、いつものように私の頭を優しく撫でる。
「ううん。大神君と仲良くならなかったら、私は帽子を脱ぐ事が出来なかったし、クラスの子達とも仲良くなれてなかった」
「はは、大袈裟だな。俺が居なくても天城がいるだろ。熱狂的な愛原ファンだからな」
「ファン? どういう事?」
「知らなかったのか? 天城のスマホの待ち受け画面、メイド姿の愛原だぞ」
「え!?」
「あ、もう一人、愛原の写真を大事にしている奴がいたな。今頃駅で泣いてるかも」
「もう一人って……っ!?」
星崎君!?
サーッと音を立てて血の気が引いて行く。
どうしよう、すっかり忘れていた。
どんな事情があったにせよ、突然居なくなった上に待ち合わせもすっぽかすなんて最低だ。
胸の奥が掴まれたように痛む。
もう、嫌われちゃったかもな……。
残酷な未来に意気消沈していると、大神君は再び私の頭を優しく撫でた。
「大丈夫だよ、愛原が遅くなることは連絡してあるから」
「え? いつの間に!?」
「凪に絡まれてる愛原を見つけた時」
「そ、そうなんだ……」
胸につっかえていた何かがスッと落ちて行く。
私が落ち着いた事を確認した大神君は、
「俺のせいで遅くなるって言ったら凄く心配してた。愛原に何かあったら一生恨むってさ、こわいこわい。早く帰ろう」
そう口にし、猫達に背を向けて歩き出した。
「え、もういいの?」
「あぁ、居場所が分かっただけで充分だ。また一緒に会いに来てくれるだろ?」
「それはもちろんだけど……」
どこかに保護される可能性があるタマゴちゃん。
とても人懐こくて大人しい猫だから、直ぐに新しい家族が見つかるだろう。
それはとても嬉しい事だけど、もしも譲渡先が遠い場所だったら、私達は簡単に会いに行くことは出来ない。
私の一番の願いは、大神君がタマゴちゃんの新しい家族になる事だ。
けれど、人にはそれぞれ事情があって、私が強制する事では無い。
どうしたら良いんだろう……。
私の沈黙の訴えに、大神君は何かを察したように柔らかく微笑む。
「もしかして、保護された後の事を考えてる?」
「うん……。大神君が新しい家族になったら、タマゴちゃんも幸せだろうなって」
私の細やか願いに、大神君の背中が寂しそうに丸くなった。
「出来る事ならそうしたいよ。けど、下宿先のルミさんの家に連れて行く訳には行かないし、一人で暮らしている母親に世話を頼むのは無責任だ。中途半端な気持ちの俺より、責任をもって家族に迎えてくれる人じゃないとダメなんだよ」
こぼれ落ちた儚げな声に胸が苦しくなる。
「そう……だよね……」
大神君の言っている事は正しい。
間違っていない。
そんなのは分かってる。
けれど、なかなか素直に受け入れる事が出来なかった。
誰か、大神君の近くで引き取ってくれる人はいないだろうか――。
一人で考え込んでいると、陽華ちゃんが急ぎ足で現れる。
「あのね、その子、タマゴちゃんの子供なんだって。そっくりだよね」
そう伝えると、大神君は目を丸くして二匹を見比べる。
やがて納得したようにニッコリと笑った。
「ありがとう。愛原のおかげで、またコイツと……コイツらと会えた」
「ううん、お礼を言わなきゃいけないのは私の方だよ。大神君のおかげでいろいろ変われたから」
「それは、愛原が頑張ったからだろ?」
何かが吹っ切れたように勢いよく立ち上がった大神君は、いつものように私の頭を優しく撫でる。
「ううん。大神君と仲良くならなかったら、私は帽子を脱ぐ事が出来なかったし、クラスの子達とも仲良くなれてなかった」
「はは、大袈裟だな。俺が居なくても天城がいるだろ。熱狂的な愛原ファンだからな」
「ファン? どういう事?」
「知らなかったのか? 天城のスマホの待ち受け画面、メイド姿の愛原だぞ」
「え!?」
「あ、もう一人、愛原の写真を大事にしている奴がいたな。今頃駅で泣いてるかも」
「もう一人って……っ!?」
星崎君!?
サーッと音を立てて血の気が引いて行く。
どうしよう、すっかり忘れていた。
どんな事情があったにせよ、突然居なくなった上に待ち合わせもすっぽかすなんて最低だ。
胸の奥が掴まれたように痛む。
もう、嫌われちゃったかもな……。
残酷な未来に意気消沈していると、大神君は再び私の頭を優しく撫でた。
「大丈夫だよ、愛原が遅くなることは連絡してあるから」
「え? いつの間に!?」
「凪に絡まれてる愛原を見つけた時」
「そ、そうなんだ……」
胸につっかえていた何かがスッと落ちて行く。
私が落ち着いた事を確認した大神君は、
「俺のせいで遅くなるって言ったら凄く心配してた。愛原に何かあったら一生恨むってさ、こわいこわい。早く帰ろう」
そう口にし、猫達に背を向けて歩き出した。
「え、もういいの?」
「あぁ、居場所が分かっただけで充分だ。また一緒に会いに来てくれるだろ?」
「それはもちろんだけど……」
どこかに保護される可能性があるタマゴちゃん。
とても人懐こくて大人しい猫だから、直ぐに新しい家族が見つかるだろう。
それはとても嬉しい事だけど、もしも譲渡先が遠い場所だったら、私達は簡単に会いに行くことは出来ない。
私の一番の願いは、大神君がタマゴちゃんの新しい家族になる事だ。
けれど、人にはそれぞれ事情があって、私が強制する事では無い。
どうしたら良いんだろう……。
私の沈黙の訴えに、大神君は何かを察したように柔らかく微笑む。
「もしかして、保護された後の事を考えてる?」
「うん……。大神君が新しい家族になったら、タマゴちゃんも幸せだろうなって」
私の細やか願いに、大神君の背中が寂しそうに丸くなった。
「出来る事ならそうしたいよ。けど、下宿先のルミさんの家に連れて行く訳には行かないし、一人で暮らしている母親に世話を頼むのは無責任だ。中途半端な気持ちの俺より、責任をもって家族に迎えてくれる人じゃないとダメなんだよ」
こぼれ落ちた儚げな声に胸が苦しくなる。
「そう……だよね……」
大神君の言っている事は正しい。
間違っていない。
そんなのは分かってる。
けれど、なかなか素直に受け入れる事が出来なかった。
誰か、大神君の近くで引き取ってくれる人はいないだろうか――。
一人で考え込んでいると、陽華ちゃんが急ぎ足で現れる。
