「会って、いいのか……俺」
スマホに映る猫を眺めながら、ぽつりと呟く大神君。
「え? 会いたいから探してたんじゃないの?」
陽華ちゃんの問いかけに、大神君がゆっくりと口を開いた。
「会いたかったよ。けど、本当に会えるかもしれないと思ったら怖くなった」
「どうして?」
「アイツが姿を見せなくなったのは、俺の事が嫌いになったからなんじゃないかって」
「嫌われるような事をしたの?」
事情を知らない陽華ちゃんは、無遠慮に疑問を投げかける。
見ている私の方が辛くなってくるほど、大神君の声は震えていた。
「俺は何もしてないよ。けど、俺のせいで嫌な思いをしただろうから、だから――」
「会った時に逃げられるのが怖い……って事?」
陽華ちゃんの言葉に、大神君は控え目に首肯する。
私は思わず大神君の腕を掴んだ。
「大神君……」
なんて、声をかけたらいいだろう。
絶対大丈夫だよ。
一緒に会いに行こうよ。
なんとかなるよ。
違う。
どれも大神君を勇気づける言葉じゃない。
でも、このままじゃ大神君は――。
何の助言も出来ないまま佇んでいると、獅童君が真剣な面持ちで大神君を見据えた。
「そうやって勝手に決めつけて会わないとか、俺にした事と同じじゃねーか」
「凪……」
「分かったふりして勝手に距離をとって消えやがって、その猫だって、お前の事を探してるかもしれないだろ」
「何を根拠にそんな事」
「あのなぁ、お前が思ってる以上に猫は賢い生き物なんだよ。あいつら、結構人間の気持ちも言葉も理解してるぞ」
力強い声。
荒々しく聞こえるのに心がこもった言葉。
獅童君から発せられる言霊が、大神君の瞳を輝かせる。
「それは、俺の気持ちを分かってくれるって言いたいのか?」
「その猫の事、大切に思ってるんだろ?」
「あぁ……」
「だったら、伝わるんじゃねーの?」
そう言うと、獅童君は恥ずかしそうに背を向けた。
陽華ちゃんはすかさず顔を覗きに行く。
「良い事言うじゃない、見直した」
「お前に見直されても嬉しくねーよ」
「照れちゃって」
「照れてねーし」
戯れる陽華ちゃんと獅童君。
二人の微笑ましい空気感が、大神君を優しく包み込む。
「凪、ありがとう」
大神君の朗らかな声。
迷いが晴れたのか、心が決まったのか、とても爽やかな表情だ。
感謝を述べられた獅童君は、戸惑いながらも踵を返す。
「お礼を言うにはまだ早いぞ」
「え?」
「今から行くんだろ?」
獅童君の問いかけに大神君はたじろいだが、覚悟を決めたように大きく頷いた。
「花宮、今から家に行ってもいいか?」
「もちろん、着いて来て」
陽華ちゃんは満面の笑みで頷くと、颯爽と公園を後にする。
不安そうに後を追う大神君。
獅童君はチャンスとばかりに、大神君と無理矢理肩を組んだ。
「ほら、シャキッとしろ」
「――っ!?」
「俺を拒否ってた勢いはどこ行った?」
「わ、分かった、分かったから放してくれ!」
恥ずかしそうに獅童君を突き放した大神君は、しっかりとした足取りで公園を出て行く。
獅童君は苦笑しながらも、嬉しそうに追いかけて大神君の隣を陣取った。
並んで歩く二人の姿は、誰が見ても仲の良い友人同士。
よかったね、大神君。
あとは、タマゴちゃんと再会するだけだね。
どうか、大神君の願いが叶いますように……。
私は祈りながら、公園を後にした。
☆☆☆
スマホに映る猫を眺めながら、ぽつりと呟く大神君。
「え? 会いたいから探してたんじゃないの?」
陽華ちゃんの問いかけに、大神君がゆっくりと口を開いた。
「会いたかったよ。けど、本当に会えるかもしれないと思ったら怖くなった」
「どうして?」
「アイツが姿を見せなくなったのは、俺の事が嫌いになったからなんじゃないかって」
「嫌われるような事をしたの?」
事情を知らない陽華ちゃんは、無遠慮に疑問を投げかける。
見ている私の方が辛くなってくるほど、大神君の声は震えていた。
「俺は何もしてないよ。けど、俺のせいで嫌な思いをしただろうから、だから――」
「会った時に逃げられるのが怖い……って事?」
陽華ちゃんの言葉に、大神君は控え目に首肯する。
私は思わず大神君の腕を掴んだ。
「大神君……」
なんて、声をかけたらいいだろう。
絶対大丈夫だよ。
一緒に会いに行こうよ。
なんとかなるよ。
違う。
どれも大神君を勇気づける言葉じゃない。
でも、このままじゃ大神君は――。
何の助言も出来ないまま佇んでいると、獅童君が真剣な面持ちで大神君を見据えた。
「そうやって勝手に決めつけて会わないとか、俺にした事と同じじゃねーか」
「凪……」
「分かったふりして勝手に距離をとって消えやがって、その猫だって、お前の事を探してるかもしれないだろ」
「何を根拠にそんな事」
「あのなぁ、お前が思ってる以上に猫は賢い生き物なんだよ。あいつら、結構人間の気持ちも言葉も理解してるぞ」
力強い声。
荒々しく聞こえるのに心がこもった言葉。
獅童君から発せられる言霊が、大神君の瞳を輝かせる。
「それは、俺の気持ちを分かってくれるって言いたいのか?」
「その猫の事、大切に思ってるんだろ?」
「あぁ……」
「だったら、伝わるんじゃねーの?」
そう言うと、獅童君は恥ずかしそうに背を向けた。
陽華ちゃんはすかさず顔を覗きに行く。
「良い事言うじゃない、見直した」
「お前に見直されても嬉しくねーよ」
「照れちゃって」
「照れてねーし」
戯れる陽華ちゃんと獅童君。
二人の微笑ましい空気感が、大神君を優しく包み込む。
「凪、ありがとう」
大神君の朗らかな声。
迷いが晴れたのか、心が決まったのか、とても爽やかな表情だ。
感謝を述べられた獅童君は、戸惑いながらも踵を返す。
「お礼を言うにはまだ早いぞ」
「え?」
「今から行くんだろ?」
獅童君の問いかけに大神君はたじろいだが、覚悟を決めたように大きく頷いた。
「花宮、今から家に行ってもいいか?」
「もちろん、着いて来て」
陽華ちゃんは満面の笑みで頷くと、颯爽と公園を後にする。
不安そうに後を追う大神君。
獅童君はチャンスとばかりに、大神君と無理矢理肩を組んだ。
「ほら、シャキッとしろ」
「――っ!?」
「俺を拒否ってた勢いはどこ行った?」
「わ、分かった、分かったから放してくれ!」
恥ずかしそうに獅童君を突き放した大神君は、しっかりとした足取りで公園を出て行く。
獅童君は苦笑しながらも、嬉しそうに追いかけて大神君の隣を陣取った。
並んで歩く二人の姿は、誰が見ても仲の良い友人同士。
よかったね、大神君。
あとは、タマゴちゃんと再会するだけだね。
どうか、大神君の願いが叶いますように……。
私は祈りながら、公園を後にした。
☆☆☆
