中央の噴水まで足を進めると、私に驚いたハトたちが一斉に飛び立った。
なんだか悪い事をしてしまった気分になり、その場を立ち去ろうと踵を返したその瞬間、目の前を一匹の猫が横切る。
毛色や模様がタマゴちゃんに似ている気がして、何となく追いかけた。
私の足音に気付いた猫は、逃げる様子も無くゆっくりと近づいてくる。
随分と人に慣れている猫だ。
確か、タマゴちゃんには背中にハートがあったはず。
「こんにちは」
しゃがみ込んで背中を確認するが、ハートは見当たらない。
勘違いだろうか。
でも――、
写真を見せてもらったのはたった一度だけ。もしかしたらハート形に見える角度があるのかもしれない。
写真を撮って大神君に送ってみよう。
スマホを構えて猫に向ける。
近づいて来た猫は甘えるように寝転がった。
懐いてくれてとっても嬉しいんだけど、真っ白なお腹を撮りたい訳じゃないんだよな――と、思いつつも、可愛いので何枚か写真を撮る。
なんとか背中やお尻の模様が見えるように撮影すると、直ぐに大神君に送った。
あとは大神君が来てくれるのを待つだけ。
猫の頭を撫でながら一息ついていると、
「あれ? 猫耳メイドさん?」
嘲るような声音。
背中に悪寒が走った。
この感覚は――、
「あ……」
振り返ると、派手な豹柄のコートを纏った男性が立っていた。
獅童凪。
大神君の元友達だ。
獅童君は作られたような笑顔で私を見据えている。
「もしかして、俺の事忘れちゃった?」
「いえ……獅童君ですよね」
「よかった、覚えててくれたんだね。どうして連絡くれなかったの? 待ってたのに」
「ごめんなさい。メモ無くしちゃって」
「そうだったんだ。じゃあさ、ちょっとここで話さない?」
「いえ、私は特に話す事は――」
「少しだけだから」
険しい顔でにじり寄って来る獅童君。
足許で寛いでいた猫が、毛を逆立てて逃げて行った。
「あ……待って!」
もしかしたら大神君が探している猫かもしれないのに、ここで見失いたくない!
私は男の声を無視して猫を追いかける。
けれど、直ぐに足が止まってしまった。
腕を掴まれていたのだ。
「どうせアイツと待ち合わせなんでしょ?」
「アイツって?」
「あの猫殺しに決まってるだろ」
嫌だ。
この人を大神君に合わせたくない!
「私の友達にそんな人はいません!」
叫びながら掴まれた腕を振り解くと、男は顔を顰めて私に詰め寄って来る。
怖くなって身構えていると、
「鈴!」
快活な女性の声が公園に響いた。
振り返った先に見えたのは、肩を揺らして息を整える陽華ちゃんの姿。
どうしてここに!?
なんだか悪い事をしてしまった気分になり、その場を立ち去ろうと踵を返したその瞬間、目の前を一匹の猫が横切る。
毛色や模様がタマゴちゃんに似ている気がして、何となく追いかけた。
私の足音に気付いた猫は、逃げる様子も無くゆっくりと近づいてくる。
随分と人に慣れている猫だ。
確か、タマゴちゃんには背中にハートがあったはず。
「こんにちは」
しゃがみ込んで背中を確認するが、ハートは見当たらない。
勘違いだろうか。
でも――、
写真を見せてもらったのはたった一度だけ。もしかしたらハート形に見える角度があるのかもしれない。
写真を撮って大神君に送ってみよう。
スマホを構えて猫に向ける。
近づいて来た猫は甘えるように寝転がった。
懐いてくれてとっても嬉しいんだけど、真っ白なお腹を撮りたい訳じゃないんだよな――と、思いつつも、可愛いので何枚か写真を撮る。
なんとか背中やお尻の模様が見えるように撮影すると、直ぐに大神君に送った。
あとは大神君が来てくれるのを待つだけ。
猫の頭を撫でながら一息ついていると、
「あれ? 猫耳メイドさん?」
嘲るような声音。
背中に悪寒が走った。
この感覚は――、
「あ……」
振り返ると、派手な豹柄のコートを纏った男性が立っていた。
獅童凪。
大神君の元友達だ。
獅童君は作られたような笑顔で私を見据えている。
「もしかして、俺の事忘れちゃった?」
「いえ……獅童君ですよね」
「よかった、覚えててくれたんだね。どうして連絡くれなかったの? 待ってたのに」
「ごめんなさい。メモ無くしちゃって」
「そうだったんだ。じゃあさ、ちょっとここで話さない?」
「いえ、私は特に話す事は――」
「少しだけだから」
険しい顔でにじり寄って来る獅童君。
足許で寛いでいた猫が、毛を逆立てて逃げて行った。
「あ……待って!」
もしかしたら大神君が探している猫かもしれないのに、ここで見失いたくない!
私は男の声を無視して猫を追いかける。
けれど、直ぐに足が止まってしまった。
腕を掴まれていたのだ。
「どうせアイツと待ち合わせなんでしょ?」
「アイツって?」
「あの猫殺しに決まってるだろ」
嫌だ。
この人を大神君に合わせたくない!
「私の友達にそんな人はいません!」
叫びながら掴まれた腕を振り解くと、男は顔を顰めて私に詰め寄って来る。
怖くなって身構えていると、
「鈴!」
快活な女性の声が公園に響いた。
振り返った先に見えたのは、肩を揺らして息を整える陽華ちゃんの姿。
どうしてここに!?
