一匹オオカミ君と赤ずきんちゃん

真剣な眼差し。
嘘の無い瞳。
何故か分からないけど心臓が痛い。

「そ、そうなんだ」

そりゃいるよね。
文武両道でカッコよくて優しくて、周りには可愛い女の子ばかり。
私には遠い存在だ。
どんなに背伸びしたって届かない。

「教えてあげようか? 俺の好きな人」
「い、いやいやいや、流石にそこまでは聞けないよ」
「俺はいいよ。教えても」
「え! えーっと、辞めとく」

何故か聞きたくないと思ってしまった。
大神君の好きな人なら知りたいけど、星崎君のは聞きたくないかも。

「残念、聞いて欲しかったのにな」

恥じらうように窓の外を眺める星崎君。
 
どうしたんだろう、今日はいつもと様子が違う。
カップル見過ぎちゃったのかな……。
 
違う事考えよう。
違う事。
違う事。
 
窓の外にはジェットコースターのレーン。
 
天城さん、楽しんでるかな……。

ん?

――っ!?

星崎君の好きな人って、天城さん!?
 
さっき天城さんに声かけられた時の様子が変だったし、もしかして、星崎君が私に好きな人を教えたいのは相談したいから!?
 
ど、どうしよう。
私全然気の利いた事出来てない。
ごめん、星崎君。
私、その手の話題には全く引き出しが無い人です!

「あ、あの、もしかして星崎君、私に恋愛相談しようとしてる?」
「恋愛相談? どうして?」

きょとんとする星崎君。
私の推理、間違っていたのかな?

「あ、違った? なら良かった。私、その手の話には(うと)くて役に立たないから」

恥ずかしくなり笑って誤魔化す。
恋愛とは関係ない話題を探しながら、何事も無かったように空を眺めていると、

「そんな事……無いと思うよ」

星崎君がポツリと呟いた。

「え?」
 
驚いて視線を戻すと、恥ずかしそうに笑顔を作る星崎君と目が合う。

「――だって、俺の好きな人、愛原さんだから」