一匹オオカミ君と赤ずきんちゃん

無力感から足取りが重い。
何が愛原の為だ。
余計な事して傷付けて。
振り回しているのは俺の方じゃないか。
俺は何がしたいんだ?
本当に救おうとしたのか?
愛原を利用して、自分が救われようとしていただけじゃないのか?
 
俺は――、

「やっと見つけた」

突然、華やかな声が降り注いだ。
分厚い霧が晴れて行くような感覚。

鬱々としていた俺の前に現れたのは星崎だった。
不思議と気持ちが楽になる。

「星崎……」
「誰もお前らの連絡先を知らないから、探すの大変だったぞ」
「ごめん。クラスの皆はどうしてる? 愛原が悪く言われて無いと良いんだが」
「それは心配ない。愛原さんは朝から体調が悪かったって事にしておいた」
「どうして、そんな事……」
「何か訳ありみたいだったから」

言い辛そうにする星崎を、思わず抱きしめそうになって必死にこらえた。

天使かこいつは……。

良い奴過ぎて逆に心配になるレベルだ。
それに比べて俺は――。

「ごめん、なんか吐きそう」

倒れ込むように星崎の肩に体を預ける。

「おい! トイレ行けトイレ!」
「あぁ、そうする。あとは頼んだ」
「頼むって何を?」
「愛原、屋上にいるから」

逃げるように言って立ち去ろうとすると、星崎は飛び跳ねるように俺の腕を掴んだ。

「お、俺で大丈夫なのか? 天城さんに頼んだ方が……」
「良いのか、それで」
「え?」
「話すきっかけ欲しかったんだろ?」
「それはそうだけど、タイミング的に今じゃない気がする」
 
星崎の不安そうな訴えに、俺は満面の笑みを返す。

「お前なら大丈夫だ」
「いや、そんな笑顔を向けられてもだな……」
「悪い、これ以上は俺の胃袋が持たない」

ワザとらしく口元を覆いながら言うと、星崎は慌てて俺の腕を解放した。

「わ、分かった、一人で行くよ」
「あぁ、頼む……」

頑張れよ。
狼狽しながらも屋上に向かう星崎。
その背中に声援を送りながら、俺は再び闇に落ちた。

結局、人任せか……。
やっぱり俺は最低だ。



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