またあいつ等か……。
いつもの俺なら思い切り睨んで蹴散らしていたが、今日は愛原の為に利用させてもらう事にした。
愛原には辛い思いをさせるかもしれないが、チャンスは今しかない。
俺が視線で合図を送ると、星崎は頷いてゆっくりと愛原の元へ向かった。
「愛原さん、これ」
戸惑いながらも声をかける星崎。
緊張しているのか、カチューシャを差し出す動きがぎこちない。
愛原の方も、話したことのない星崎に声をかけられて不思議そうにしていたが、差し出されたカチューシャを見て顔色を変えた。
「あ、あの……」
「そのままでも可愛いと思うけど、猫耳メイドなんだからコレ付けないと」
星崎の言葉を聞き、愛原の表情が困惑から絶望に変わる。
「まって……私、猫耳……」
声の出し方を忘れてしまったかのように、言葉を詰まらせる愛原。
異変に気付いていない天城は、愛原の代わりにカチューシャを受け取る。
「そうそう、重要アイテムよね。愛原さん猫っぽいから凄く似合いそう」
「天城さんもそう思う? 俺も前から思ってたんだ」
茫然とする愛原を挟み、楽しげに話し始める天城と星崎。
このまま二人で盛り上がり続けるかと思ったが、
「どうして……」
今にも泣きそうな愛原の声が、二人の会話を制止させた。
焦る星崎の顔から血の気が引いて行く。
「ご、ごめん、愛原さん。俺、何か気に障るような事言ったかな? もしかして猫耳付けるの嫌だった?」
「ううん、違う」
「じゃあ……」
「嫌とか、そういうのじゃなくて、その……私、猫耳付けてるのに、どうしてそんな事言うのかなって」
不自然な笑顔と震える声。
愛原の言葉は星崎や天城だけでは無く、集まっていたクラスメイト全員の表情を曇らせる。
「――? 何言ってるの、愛原さん」
星崎は困り顔で首を傾げた。
その態度が合図だったかのように、辺りから嘲るような笑いが起こる。
「なにあれ、わざとらしい。天然気取り?」
「星崎君にかまって欲しいんでしょ」
「可愛いって言われて調子にのってるんだよ」
星崎ファンの女子達が口々に辛辣な言葉を吐き出した。
止みそうにない悪口に困り果てた天城は、仕切り直すように溌剌とした声を出す。
「愛原さんってそそっかしい性格? 忘れてるよ、猫耳」
そう言って天城が猫耳カチューシャを差し出すと、愛原は両手で顔を覆い泣き出してしまった。
「ごめん……なさい……」
「え、ちょっと大丈夫? 慣れない事して疲れちゃった?」
優しく声をかける天城。
愛原は小さく頷き、帽子を握りしめながらクラスメイト達の群れから抜け出す。
そしてそのまま、離れた所で様子を窺っていた俺の元へやって来た。
いつもの俺なら思い切り睨んで蹴散らしていたが、今日は愛原の為に利用させてもらう事にした。
愛原には辛い思いをさせるかもしれないが、チャンスは今しかない。
俺が視線で合図を送ると、星崎は頷いてゆっくりと愛原の元へ向かった。
「愛原さん、これ」
戸惑いながらも声をかける星崎。
緊張しているのか、カチューシャを差し出す動きがぎこちない。
愛原の方も、話したことのない星崎に声をかけられて不思議そうにしていたが、差し出されたカチューシャを見て顔色を変えた。
「あ、あの……」
「そのままでも可愛いと思うけど、猫耳メイドなんだからコレ付けないと」
星崎の言葉を聞き、愛原の表情が困惑から絶望に変わる。
「まって……私、猫耳……」
声の出し方を忘れてしまったかのように、言葉を詰まらせる愛原。
異変に気付いていない天城は、愛原の代わりにカチューシャを受け取る。
「そうそう、重要アイテムよね。愛原さん猫っぽいから凄く似合いそう」
「天城さんもそう思う? 俺も前から思ってたんだ」
茫然とする愛原を挟み、楽しげに話し始める天城と星崎。
このまま二人で盛り上がり続けるかと思ったが、
「どうして……」
今にも泣きそうな愛原の声が、二人の会話を制止させた。
焦る星崎の顔から血の気が引いて行く。
「ご、ごめん、愛原さん。俺、何か気に障るような事言ったかな? もしかして猫耳付けるの嫌だった?」
「ううん、違う」
「じゃあ……」
「嫌とか、そういうのじゃなくて、その……私、猫耳付けてるのに、どうしてそんな事言うのかなって」
不自然な笑顔と震える声。
愛原の言葉は星崎や天城だけでは無く、集まっていたクラスメイト全員の表情を曇らせる。
「――? 何言ってるの、愛原さん」
星崎は困り顔で首を傾げた。
その態度が合図だったかのように、辺りから嘲るような笑いが起こる。
「なにあれ、わざとらしい。天然気取り?」
「星崎君にかまって欲しいんでしょ」
「可愛いって言われて調子にのってるんだよ」
星崎ファンの女子達が口々に辛辣な言葉を吐き出した。
止みそうにない悪口に困り果てた天城は、仕切り直すように溌剌とした声を出す。
「愛原さんってそそっかしい性格? 忘れてるよ、猫耳」
そう言って天城が猫耳カチューシャを差し出すと、愛原は両手で顔を覆い泣き出してしまった。
「ごめん……なさい……」
「え、ちょっと大丈夫? 慣れない事して疲れちゃった?」
優しく声をかける天城。
愛原は小さく頷き、帽子を握りしめながらクラスメイト達の群れから抜け出す。
そしてそのまま、離れた所で様子を窺っていた俺の元へやって来た。
