一匹オオカミ君と赤ずきんちゃん

食後、私とみっちゃんが洗い物をしている間、お父さんと大神君は仲良くテレビゲームをしていた。
同性だからか、お父さんのコミュニケーション能力が高いからなのか、大神君はとても楽しそうだ。

学校では見たことのない表情ばかり。
 
お父さんに先を越された気がして、妙な嫉妬心が湧いた。
 
ほんの少し話しただけで満足していた自分に嫌気がさし、食器を洗う音が荒くなる。

「鈴、気を付けてね」
「――っ!?」
 
みっちゃんの助言は手遅れだった。
手にしていた小皿の縁が僅かに欠けている。
コントロールできない感情に呆然としていると、みっちゃんが小皿を覗いて来た。

「あらら」
「ごめん」
「いいわよ、そろそろ買い換えようと思ってたから、それより怪我してない?」
「大丈夫」
「じゃあ後は私がやっておくから、鈴はお茶でも飲んで一息ついて」

みっちゃんは私の身体をグイグイと押して、ダイニングテーブルの前に移動させる。

「でも……」
「私の分のお茶もお願いね」

有無を言わさないみっちゃんの眼差し。
私は仕方なくお茶の準備を始めた。
食器棚に並んだカップの中から、お気に入りの猫柄と犬柄のカップを取り出す。
私が遊びに来るようになって、みっちゃんが用意してくれたカップだ。
この家が私の居場所である証。

両手にカップを持ち、物思いに耽っていると、

「ねぇ、鈴、今日からお昼どうしてるの?」
「――っ!?」

不意に名前を呼ばれ、手にしていたカップを落としそうになる。
みっちゃんに知られたく無くて、控え目に深呼吸をした。

「ば、売店で適当におにぎりとかパンとか……」

上ずった声で答えると、みっちゃんは嬉々とした表情で振り返る。

「それなら、私がお弁当作ろうか?」
「え? いいよ、そんなわざわざ」
「わざわざでもないわ。仕事が無い日の朝は暇だし、大神君の分のついでよ」

みっちゃんは寂しげに背中を向けた。

「え? みっちゃんが作ってるの?」
「仕事が無い日だけよ」
「そうなんだ。でも、大変そうだから私はいいよ」
「それがね、困った事に大変じゃないのよ。全然作り甲斐がないの」

食器を洗い終えたみっちゃんは、不満気な表情で振り返ると、私の手からカップを奪い取る。