「あのときは乗せてくれてありがとう、イェラーキ」

 誰がどこで聞いているのかわからないから小声でお礼を言う。
 すると、ちゃんと伝わったのか返事をするようにイェラーキは首を上下に振ってくれた。

 胸がいっぱいになって思わずはぁとため息が漏れていた。

「やっぱかっこいいなぁ。オレも早く馬に乗れるようになりたい」
「好きなのか? 馬が」

 訊かれて大きく頷く。

「かっこいいし可愛いし、昔から馬に乗るのが夢だったんだ」
「なら、こいつに乗れて夢が叶ったわけか」
「あー、でも実はあのときのこと、ほとんど覚えてなくて」

 そう苦笑する。

「だろうな。あのとき泣いているお前をこいつに乗せるのは一苦労だった」
「だっ、て……」

 一気に顔が熱くなって、思わず大きな声が出そうになってしまった。
 ……正直、あのときどうやってイェラーキに乗ったのかさえも全然覚えていない。
 多分、なんとかして引っ張り上げてくれたのだとは思うけれど。本当に情けないったらない。