嬉しそうに話すイリアスを見ながら、私は昨日のラディスの話を思い出していた。

 ――あれは偽者だ。

 ――戦を早めたい誰かが送り込んだという可能性も……。

 イリアスにも教えたいけれど、でも今のところラディスがそう言っているだけで確証はない。
 それに、なんでそんなことわかるんだよと問われたら私には答えようがない。

(私が聖女だから、とは言えないもんな……)

 また、イリアスに隠し事が出来てしまったことになる。
 胸のざわざわはなくなったけれど、罪悪感でまた胸が痛んだ。



 食堂に行くと、よく話す皆が私の姿を見つけ声を掛けてきてくれた。

「トーラ! もう大丈夫なのか?」
「あぁ。もう、すっかり。ありがとな」
「そりゃ良かった。……昨日イリアスの奴が寂しそうだったからよ」

 そう大きく耳打ちされて、トレーを持って前を歩いていたイリアスが半眼で振り向いた。

「おい、聞こえてんぞ。寂しかったんじゃなくて心配してたんだっつーの」

 はいはいと笑いながらそいつは自分の席へと行ってしまった。