幸か不幸か、いつ隣国との戦が始まってもおかしくないこの国では騎士志願者を広く募っていて、私もすぐに見習いとしてこの寄宿舎に入ることが出来た。無論トーラの姿でだ。

 こうしてなんとか城内に入ることは出来たわけだが、肝心のその書物がどこにあるのかわからなかった。
 貴重な書物ばかりが保管された秘密の書庫が城内のどこかにあるらしいという情報までは掴んだのだが、騎士見習いという下っ端も下っ端な身分では城内でも入れる範囲は限られる。
 やはり正式に騎士となって、堂々とその書庫に入りたかった。

 しかし、騎士の称号を得るには何度か行われる昇級試験に受からなければならない。
 あの男、ラディスに認めてもらわなければならないのだ。
 ……ちなみに、これまでに3度昇級試験があったが連続で落ちている。悔しいったらない。

 お陰で最近では帰る方法を見つけるという本来の目的よりも、純粋に騎士になりたいという気持ちの方が大きくなっていたりするのだった。