「離せ!」

 ドンっと、私はその胸を突き飛ばした。
 結構力を入れたつもりだったが、ラディスは私から手を離しベッドに腰を下ろしただけだった。
 でもその目は驚きに見開かれていて。

「――な、なんだよお前、聖女なら誰でもいいのかよ!」

 そんな言葉が口を突いて出ていた。
 ラディスが眉をひそめる。

「なにを、」
「知ってんだからな! お前昨日、聖女様と部屋で……っ」

 そこまで言ってしまってから、しまったと口を噤む。
 溜息を吐いて彼は言った。

「見ていたのか」
「……」

 また目が見れなくなってしまった。
 でも、彼は否定しなかった。
 そのことにまた胸がざわついて、私はせめてもと小さく弁解する。

「覗いたわけじゃないからな。戻ろうとしたときに偶然、窓から見えちまっただけで」
「あの女が、眠れないからと勝手に部屋に入ってきたんだ」

 ラディスの口から出たその言葉を聞いて、さすがにぎょっとする。

「あの女って……聖女様だろ?」
「あの女は聖女などではない」
「……は!?」