イリアスは私よりひとつ年上でオレンジに近い明るい赤毛と猫のようにつり上がった目が特徴の気のいい奴だ。寄宿舎のルームメイトでもある。
1年前、この寄宿舎に入り相部屋だと聞かされた時には「男と!?」と焦ったが、その相手がこいつで本当に良かったと思っている。いびきが煩いのが玉に瑕だが。
勿論、このイリアスにも私が女であることは秘密だ。
……なぜ私が男に姿を変えてまで騎士見習いとして城内にいるのか。
この城のどこかに、聖女の伝説について記された書物があるらしいのだ。
そのことを知ったのは、私があの男が紹介してくれた食堂兼宿屋で働いているときだった。
ひょっとしたらその本に向こうの世界に帰る方法も記されているかもしれない。
居ても立ってもいられなくなり、すぐさま城に行きたいと思った。
しかし、当然ながら城にはある程度しっかりとした身分がないと入れない。
この異世界の地でこの私がそこまでの身分を得るには騎士が一番手っ取り早かったのだ。



