実はこのニ次試験に向けた馬上訓練を、私はずっと楽しみにしていたのだ。
 動物は全般好きだが馬は特別好きだ。先ず走る姿がとにかくカッコイイ。それに目が可愛い。
 乗馬クラブに通ってみたいと色々調べていた時期もあったくらいだ。
 結局金銭面で断念せざるを得なかったので、今正直めちゃくちゃワクワクしている。
 馬に乗れる。間違いなく、騎士になりたい理由のひとつだった。

「ラディス団長の愛馬イェラーキはこちらにはいないのですか?」

 そのとき誰かがそう声を上げた。

「イェラーキは特別な馬だ。この厩舎にはいない」

 先輩騎士が答えるのを聞いてへぇと思った。

(あの子、イェラーキっていうのか)

 そういえばラディスがそんなふうに呼んでいたような気がする。
 カッコよくてあの子にピッタリな名だと思った。

「イェラーキは気性の激しい馬だ。乗り熟せるのも触れることが出来るのもラディス団長のみ。不用意に近づいたら蹴られるからな。絶対に近寄ったり刺激したりしないように」

 馬に蹴られたら最悪命を落とすと聞いたことがある。想像してゾッとした。

(あのときはラディスがいたから平気だったってことか)

 私はワクワクを抑え、気を引き締めた。