ニ次試験に向けた鍛練メニューは主に馬上訓練だ。
私と同じく一次試験に合格した見習いたちが厩舎の前にずらりと並べられ、何人かの先輩騎士が乗馬における注意事項を静かに話していく。
普段の指導のような大きな声では馬が驚いてしまうため、その声は酷く淡々としていた。
「中には乗馬経験がある者もいるとは思うが今日は基礎から教えていく」
それを聞いて思い出したのは2年前のことだ。
(そういえば、ラディスと一緒に乗ったっけな)
あまり思い出したくないが、泣いてどうしようもなかった私を後ろから支えるかたちであいつは馬を走らせた。
あれが私にとって初めての乗馬体験となった。
(あのときの子はここにはいないのかな)
あの馬は黒毛だった。日本では確か「青毛」と言うのだったか。
とても凛々しくカッコいい馬だったと記憶している。
ここから見える馬たちは皆濃さの違いはあるものの茶色の毛並みで、どうやらいないようだ。
「まずは馬に慣れることからだ。お前たちには今日からここにいる馬の世話をしてもらう」
先輩騎士の言葉を聞いて周囲が少しだけざわついた。
私はイリアスから聞いていたので特に驚きはなかった。
(イリアスの奴、糞をかけられたとかなんとか言ってたっけ)
そのときのあいつの渋い顔を思い出し笑いそうになってしまった。



