『俺、騎士になって絶対あの人をお護りする』

 先ほど食堂で聞いた、あの見習いの言葉を思い出す。
 そして。

『自分の身は大事にしろ』

『俺以外の奴に触れさせないで欲しい』

 次いで、昨夜のラディスの言葉が蘇った。

(……そうか。だからラディスは昨日あんなことを言ったのか)

 あくまで騎士として、一応聖女である私を護るための言葉だったのだ。
 それがあいつの……騎士の役目だから。
 妙に納得してしまって、それと同時に無性に恥ずかしくなった。

(うっわ。私、なんつー勘違いしてんだ)

 そりゃそうだ。
 あのラディス団長が私のことを好きなんて、そんなことあるわけがないのに。
 なのにひとり赤くなって慌てたりして。

(恥ずかしすぎる……!)

 ポンっとそのとき軽く肩を叩かれた。
 友人がにっと笑っていた。

「だからトーラ、お前だって騎士になったら一緒に聖女様をお護りするんだからな!」
「そ、そうだな。頑張らねーと」

 そう言って私は無理やり笑って見せた。

 ……小さな胸の痛みには、気付かないふりをして。