「あいつホントムカつく。なんだよあの言い方!」
「まぁまぁ」

 城内にある騎士団寄宿舎の賑やかな食堂で、向かいに座る友人イリアスが苦笑した。
 午前中の鍛錬が終わり今はランチタイム。騎士を目指す多くの若者がこの食堂に集まっている。
 メニューは日替わりで、それが毎日の楽しみでもあった。
 今日は鶏肉の香草焼きとパン。それと色んな野菜の入ったスープだ。
 千切ったパンを手に私は続ける。

「なんかあいつ、オレを目の敵にしてないか?」

 いつも私だけやたら怒鳴られている気がするのだ。
 つい昨日だって私がほんのちょっと休んでいたら「そこ、怠けるな!」と怒鳴られた。他にも休んでいる奴はいたのに、その厳しい視線は私に向けられていた。

 ――ちなみにトーラでいるとき、私は自分のことを「オレ」と言うようにしている。
 念のためだ。

 するとイリアスはまさかと笑った。

「そんなことないだろ。ラディス団長は皆に厳しいし。むしろ俺らみたいな下っ端もちゃんと見てくれてるってことだろ」
「そうだけどさ……」