「あー俺も早くお姿拝見してー!」

 一旦部屋に戻るとイリアスがまたデカい声で叫んだ。
 鍛錬用の身支度を始めながら私は溜息を吐く。

「でもお前は近いうちに騎士として城の中に入れるんだから、そんときに見れんだろ」
「そうだけどさ〜」
「まぁ、お前の予想通りそうで良かったな」
「予想通りって?」
「前に言ってただろ。きっと美しい人なんだろうなって。その通りで良かったな」

 ベッドに腰掛け靴紐を結びながら言うと、イリアスがしゃがんでこちらの顔を覗き込んできた。

「どうした、トーラ。お前なんか一気にテンション下がってないか?」

 ぎくりとする。
 ……勝手に自分と比べて軽くへこんでるなんて言えない。

「オレだって聖女様が見れなくてがっかりしてんだよ」
「そっか。そうだよな」

 そして、イリアスは続けた。

「きっと、ラディス団長やキアノス副長はもう挨拶とか済ませてるんだろうなあ」
「……だろうな」
「聖女様をお護りするのは騎士の重要な役目だもんな」

 ――え?