「……ラ! トーラ!」
「ん~?」

 イリアスの大きな声で、私の意識はゆっくりと浮上した。

「起きろよ、トーラ!」

 もう朝なのか。
 いつもは大抵私の方が早く起きて起こすのは私の方なのに、珍しいなと思いながら重い瞼を上げると、イリアスが私を見下ろしていた。

「おはよ~イリアス」
「トーラ! 寝ぼけてないで早く起きろよ!」
「んだよ~、もうそんなヤバイ時間か?」
「時間はまだ平気だけど、いいからよく聞けよ! 聖女様が見つかったんだってさ!」
「へぇ~、聖女様が……はあ!?」

 私はガバっと飛び起きた。
 イリアスは私が驚いたことに気分を良くしたのか、興奮した様子で続けた。

「さっきトイレに起きたら城の方が妙に騒がしいからさ、丁度通りかかった先輩に何かあったんですかって訊いたんだ。そしたら聖女様が名乗り出てきたって! だから早く聖女様のお姿を拝見しに行こうぜ!」