「イリアスはそんな奴じゃない。あいつは私が女だってわかってもこれまでと変わらず友人として接してくれるはずだ」
「なんだ、やっぱりお前はあの男のことを好いているのか」
「はあ? だから、違うって! そういうのじゃなくて」
「そうとしか聞こえん。それなら俺が口を出すことではないが」
「だから、違うって言ってるだろ!?」

 イライラして、私は思わず言ってしまった。

「なんだよさっきから。まるでイリアスに妬いてるみたいに聞こえるっつーの」
「…………」

 ――え?

 てっきり怒鳴られるか呆れた顔をされると思ったのに、思いの外真面目な顔が返ってきてギクリとする。

「……悪いか」
「えっ、や……え?」

 ぐっと、繋いでいた手に力がこもった。

「俺だって、あんなところを見なければ気付かなかった」
「え、えーと」
「あいつに抱きつかれているお前を見て、無性に腹が立った」

 言われている台詞は、まるで愛の告白のようで。
 すっかり冷めていたはずの頬に、じわりと熱を覚える。

(嘘だろ……?)

 あの冷徹ラディス団長が?
 まさか、冗談だろ?

 でも、こちらを見つめる奴の目は真剣そのもので、嘘を言っているようには見えなかった。

「だから、俺以外の奴に触れさせないで欲しい」

 いつの間にかもう一方の手も強く握られていて。

「……わかった」

 こくりと私は頷いてしまっていた。