「この名は本当の名か?」
「あー、いや、一応男装用の偽名だけど」
「本当の名は?」

 そういえば、ラディスに本名を伝えていなかったことに気づく。
 これまで訊かれなかったからだ。
 今更な気がするけれど、別に言っても問題はないだろう。

「橘藤花。藤花っていうんだ」
「トウカ」
「そう。藤の花って意味。藤ってのは紫色の綺麗な花で、この名前結構気に入ってるんだ」

 ――そのときだ。

「橘藤花!!」
「はい!?」

 急に大空に響き渡るような大声で名を呼ばれ、反射的にピンと背筋を伸ばしていた。

「レヴァンタ王国騎士団第一次試験、合格!」

 私は大きく目を見開く。
 ラディス団長が、こちらをまっすぐに見ていた。

「今後も努力を怠らず精進するように!」
「はい!」

 大きな声で返事をすると、ラディスはその厳しい顔をふっと緩めた。

「おめでとう」
「ありがとうございます!」

 騎士団長直々の合格と祝いの言葉に、一気に胸がいっぱいになってしまった。