しかしそこでハタと気づく。

「悪い、もしかして酒臭かったか?」

 口を押さえ、ラディスから少し距離を取る。
 急いで来たから口をゆすいでもいない。

「いや、そういうわけではない。浮かれる気持ちもわかるが、あまりハメを外すなと言おうとしただけだ」
「イリアスに言ってくれよ~、まったく。――あ、そうそう、そんなことより」

 私はラディスの方に身体を向けビシっと背筋を伸ばした。

「ラディス団長!」
「なんだ、急に」

 眉をひそめた奴に勢いよく頭を下げる。

「改めて、今日はありがとうございました!」

 顔を上げるとラディスは驚いたように目を丸くしていて、私はにっと笑った。

「めちゃくちゃ嬉しかった!」

 なのに、ラディスはなんだか呆れたような顔をした。

「酔っているのか?」
「は!? 酔ってなんかない!」

 すると今度は溜息を吐かれた。

「まだ一次試験に合格しただけだろう。ここでそんなに喜んでどうする」
「そうだけどさ……」

 なんだよ、お礼を言いたかっただけなのに、そんな身も蓋もない言い方しなくたっていいだろう。
 ブツブツ小さく文句を言いながら景色の方に向き直ると。

「トーラ・ターナー」
「え?」