「ああ、今行くよ。じゃあね」

 そして、キアノス副長は私たちに手を振り奴の元へと駆けていった。
 そのときだ。

 ――あ。

 ラディスと目が合った。
 あれはおそらく『合図』だ。
 私が小さく頷くと、奴は背を向け追いついたキアノス副長と共に城の方へと歩いて行った。

 前回、空でそんな話をしたのだ。
 毎回耳打ちをして伝えるのもいつか誰かに気付かれてしまう可能性がある。
 代わりに何かしら合図を送ると。

(丁度良かった。お礼言いたかったし)

 と、隣で呆けたような溜息が聞こえた。

「はぁ〜、ほんとカッコイイよなぁ。あのふたり。俺もあんなふうになれっかなぁ」
「さぁ、どうだろうな」
「どうだろうなって」
「ま、頑張れよ。騎士イリアス!」

 そう言って私がポンと背中を叩くと、イリアスはニヘラとだらしなく笑った。

「いい響きだなあ、騎士イリアス。俺も女の子にきゃあきゃあ言われっかな!」
「そんな笑い方してたらモテないと思うぞ」
「そ、そっか、騎士らしくキリっとしてなくちゃな!」

 急にキリリと眉を上げた友人を見て、私は思わず笑ってしまった。