しかし、これはまだ最初の一歩。
 まだあと2回試験に合格しなければ騎士にはなれないのだ。

 私は大勢の見習いの前に毅然と立つラディス団長の方を見る。
 一瞬、まさか空に連れて行っている礼として合格にしてくれたんじゃ……と思ったが、奴はそんなことをする男ではない。ちゃんと私の努力を認めてくれたのだろう。

(今度お礼言わなきゃな)

 そんな奴の隣で先ほどからよく通る声で合格者の名を読み上げているのは、ラディス団長の右腕と云われるキアノス副長だ。
 長い金髪に空色の瞳をした彼はこの騎士団の中でも一際整った顔をしていて特に女性に人気がある。
 先ほどからしかめっ面をしているラディスも整った顔をしている方だと思うが、奴が『イケメン』ならキアノス副長は『美形』だろうか。
 ラディスが全く笑わないのに対し、キアノス副長はよく笑う。だから女性だけでなく騎士見習いの中でもキアノス副長は慕われている印象があった。
 そんな正反対のふたりだが、ラディス団長とキアノス副長のふたりが並んで都を歩こうものなら都中の女たちが黄色い悲鳴を上げるらしい。私は見たことはないけれど。

「イリアス・マティス!」

 そのとき、イリアスの名が挙がった。