男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される

「まさか。勿論トーラの姿で。レヴァンタと同じ、医術の心得があるってことにする」
「で、でも」
「向こうだって焦ってるだろうし、絶対に治せるって言えばすぐに入れてくれるだろ」

 それでも納得出来ないのか、イリアスは眉間にいっぱいの皴を寄せた。

「でも呪いを解く時は、元の姿に戻らなきゃならないんだろ?」
「その時は人払いすりゃいい。近くにいる人にも移るかもとか言って脅せば行けるだろ。――あ、イリアスは助手ってことにするからな」
「助手?」

 私は頷く。

「レヴァンタで呪いを解くとき、暴れる奴はラディスが取り押さえてくれたんだ」

 イリアスがごくりと喉を鳴らした。

「俺がその役をやるんだな」
「ああ。頼む」
「わかった。……けど、そんなにうまくいくかなぁ」
「まぁ、もしヤバくなったら飛んで逃げればいいしさ。そしたら夜になってから忍び込むか」

 ははと明るく笑いながら言うと、イリアスはなぜか苦虫を嚙み潰したような顔をして頭を抱えた。

「俺、団長がお前を城から出すなって言った理由が今すげぇわかった気がする……」

 何やらぶつぶつぼやいていたが、私は聞こえないふりをした。