男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される


「そんなに心配しなくても大丈夫だって」

 昨夜と同じく閑散とした食堂で、パンを口にしながらイリアスが明るく言った。
 人が少ないこと以外、いつもと変わらない朝の風景。
 今この国が戦争をしているなんて思えないほどに、いつも通りの朝だ。

「団長の強さはお前もわかってんだろ?」
「……」

 食欲がなくて硬いパンをスープに浸していると、イリアスが小声で続けた。

「それにしても団長、お前のこと本当に大事に思ってんだな」
「……え?」

 顔を上げると、イリアスがにっと笑っていた。

「お前を戦の道具にはしないって、俺も聞いてて痺れちまった。やっぱかっけーな、ラディス団長は」
「……なぁ」
「ん?」

 私はスープの中のしなしなになったパンを見つめながら訊く。

「イェラーキを飛ばして、ここからバラノスまでどのくらいかかるんだ?」
「え?」

 イリアスはきょとんとした顔をしてから「あ〜」と声を出しながら天井を見上げた。

「イェラーキ単騎なら今夜中には国境に着くんじゃないか? 多分」