男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される


「でもオレがいれば、負傷した奴を治すことが」
「イリアス」
「えっ、は、はい!」

 私の言葉を遮るように、ラディスはイリアスの名を呼んだ。

「お前はここに残り藤花を守れ。絶対に城から出すな」
「!? な、なんだよそれ!」

 意味が分からず声を上げる。が。

「はっ、了解しました!」
「!?」

 イリアスがしっかり騎士として返事をして更に驚く。

「それを伝えに来た」

 そのまま去ろうとしたラディスを、私は慌てて引き止める。

「ラディス!」

 ラディスは足を止め、背を向けたまま抑えた声で言った。

「お前を戦の道具にはしない」
「!」

 それは、以前にも聞いた言葉だ。
 と、彼はこちらを振り向き、いくらか穏やかな顔で続けた。

「大丈夫だ。必ず全員無事で戻る」
「……っ」

 私は何も返せなかった。
 鎧の音を響かせながら行ってしまうラディスを、ただずっと見送っていた。