そのとき、ふと訊きたかったことを思い出した。
「そういえば、最初っから私に気付いてたって言ってたけど、なんでわかったんだ?」
この間も訊いた気がするが確か答えはもらっていない。
すると奴はふいと視線を外し、言った。
「見ればわかる」
「男になってるのに?」
「ああ」
確かにベースは私だから面影くらいはあるだろうけれど、わかるものだろうかと首を傾げていると。
「同室の、イリアスだったか。奴にもバレていないのだな」
「勿論、言えるわけないだろ」
「もう一年になるか? よくこれまでバレなかったな」
「ふふん、私の男のフリは完璧だからな! ……まぁ、騙してるわけだから良い気はしないけど」
そう言って寄宿舎の方を見下ろす。
友人は今も何も知らずデカイいびきをかきながら気持ち良く寝ているはずだ。
イリアスのことは信頼しているし、あいつも私のことを信頼してくれている。
それがわかるごとに罪悪感は増していく。
しかし、今更言えるわけがない。
きっと言ってしまったら確実に今の関係は壊れてしまうだろう。
だから、絶対にバレるわけにはいかない。



