男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される


 フヌーディの冷たい視線が突き刺さる。

「聖女様、あんたも人を殺したことがあるのか?」
「……っ!」

 その視線から逃げるように俯き、私は首を横に振った。

 ……私はまだ、人を傷つけたことがない。

 でも、このまま正式に騎士になることが出来て、戦場に赴くことになったら……?


 ――聖女様は、戦争がお好きなのですか?


 先ほどのダフニさんの言葉が耳に蘇る。

 いざ戦場に出たとき、私は目の前の敵を手に掛けることが出来るのだろうか。

 演習で何度も手にしたことのあるあの重い剣で、本当に人を斬ることが出来るのだろうか……?

 想像したら胃の辺りが気持ち悪くなってきて、そんな自分にまた動揺する。

(私、今更怖気づいてる……?)

 騎士になるという本当の意味を、私は全然わかっていなかったのかもしれない。

 騎士になるという本当の覚悟が、全然足りていなかったのかもしれない。

 そのことに、今になって気付いてしまった。

(最低だ……)