「トーラ、身体は平気か?」
「え?」

 翌朝、食堂のいつもの席で向かいに座るイリアスが思い切るようにして言った。
 千切った硬いパンをポタージュスープに浸しながら私は首を傾げる。

「別に、平気だけど?」

 昨夜自室に戻るとすでにイリアスは寝ていて、私も良い気分で早々に自分のベッドに入り眠りについた。
 だから別に寝不足なわけでもないし、いつも通りスッキリ起きられた。

 イリアスはそれを聞くと酷くほっとしたような顔をして、更に妙に優しい声で続けた。

「そうか。まぁ、無理はするなよ。辛かったら俺が医務室から薬もらってきてやるからな」
「……? や、だから平気だって。薬ってなんのだよ」

 そう訊いてからパンを口に入れると、イリアスは気マズそうに私から視線を外しボソボソと呟くように言った。

「その、男同士は大変だっていうし、塗り薬とかやっぱあった方がいいかと」
「――ぅぐっ!?」

 やっとイリアスの言っている意味がわかって私はパンを思いっきり喉に詰まらせた。