そして。
全ての燭台の灯りを消し真っ暗になった部屋から私たちはこっそりとバルコニーに出た。
一応周囲を確認するが人目はないようだ。
「よし、行くか」
小声で言って、隣にいるラディスに手を差し出す。
「手、離すなよ」
「わかっている」
やはり緊張しているのだろう、先ほどより強く握り返された。
一度深呼吸して、目を瞑る。
( 飛べ )
途端、先ほどよりも勢いよく足元が浮き上がった。
そのまま何かに引っ張り上げられるように私たちは夜空へと跳躍した。
一人増えてもいつもと変わらない。私の身体はぐんぐん空高く昇っていく。
今日はまた星が一段と綺麗に見える気がした。三日月がほぼ真上に出ている。
頬に当たる夜風が気持ち良くて、これこれ~とひとり悦に入っていると。
「おい! どこまで行く気だ!?」
「え?」
ふと見下ろすと、私の手を握るラディスが焦ったような顔をしていた。
私はそこで上昇するのを止めて謝る。
「悪い。久しぶりだったからつい、いつもの調子で」
「まったく……」
またその眉間に皴が寄ってしまったのを見て私は慌てて言う。
「でもほら、最高だろ! 見ろよ、この絶景!」
満天の星を指差すと、ラディスも空を仰ぎ満更でもないような顔をした。



