「俺もその力で共に飛ぶことは出来ないだろうか」
もう一度問われて私は若干戸惑いながら答える。
「えっと、いや、試したことがないから……」
ひとりで飛ぶのはもう慣れたものだが、誰かにこの力を使ったことはないからわからない。
(というか、聖女の力には頼らないんじゃなかったのかよ)
そうツッコミたかったが言える雰囲気ではなかった。
と、ラディスは徐に席を立った。そのままゆっくりとした足取りでこちらにやってくる。
「な、なに?」
元の女の姿で目の前に立たれると、やっぱりデカいと感じる。多分190以上あるんじゃないだろうか。
ちなみに私がこの異世界にやってくる前、高2の健康診断で計ったときは確か165だった。
男になると少し身長が伸びるらしく、それでも170ちょい。
こいつの場合、その上体格もがっちりしているから正直かなりの圧があった。
「なら試してみよう」
「えっ」
すっと右手が差し出されて、私はその手と奴の顔とを交互に見た。
「手を取れば共に飛べないか?」
「あ、あぁ」
そういうことかと私はラディスの手をおずおずと握った。……大きくて硬い手だ。



