男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される


「大丈夫か? なんかしんどそうだけど」

 近寄ってそう声を掛けると、イリアスは苦笑した。

「やっぱり速ぇな、団長の馬は。ついて行くのでやっとだわ」

 それを聞いて、つい意地悪を言いたくなってしまった。

「やっぱお前にこの旅はキツイんじゃねーの?」
「え?」

 先ほどの怒りを思い出し、私はくるりと背を向けて続ける。

「オレはお前に守ってもらわなくても全然平気だし」
「俺が守りたいんだ」
「え?」

 思いがけず真剣な声音が返ってきて私は振り向く。
 イリアスは力なく笑っていた。

「お前が平気でも、守らせてくれよ」
「はぁ? なんだよそれ」

 イリアスに詰め寄ろうとして。

「トーラ、行くぞ」
「えっ、あ、はい」

 ラディスに声を掛けられ、私は仕方なくイリアスから視線を外しラディスの後ろについた。

(なんだよ、イリアスの奴……っ)

 ――命にかえても。お前の盾になりたいそうだ。

 先ほどラディスから聞いた言葉を思い出して、またムカムカとしてきた。

(私は、命にかえてまでお前に守ってもらいたくなんてないっつーの!)