男装聖女は冷徹騎士団長に溺愛される


 イリアスは俺にパンっと手を合わせてから走って行ってしまった。

「んだよ、アイツ……」
「彼も随分と必死だね」
「っ!?」

 気付けばすぐ後ろに銀髪の男がいてびっくりする。

「ザフィーリ!」
「まぁ、友人が心配な気持ちはわかるけどね。それか余程あの魔女が許せないのかな」
「……」

 イリアスはまんまと魔女の呪いに掛けられた。
 だから彼女を許せない気持ちはわかるけれど。

「でも、団長が許可するとは思わなかったな」
「ほんとだよ……」

 私は額を覆う。
 てっきりラディスのことだから拒否すると思ったのに。

(一体何を言ったんだよ、イリアスの奴……)

「本当は僕もついて行きたいところだけれど」
「え?」

 顔を上げると、ザフィーリがいつもの真面目な顔で言った。

「くれぐれも気をつけて」
「ああ。ありがとう、ザフィーリ」

 私はザフィーリがその場を去ってから小さく息を吐いた。

 ちょっとワクワクしていた魔女捜索の旅に、想定外の不安要素が出来てしまった。