「本気で騎士になりたくてここにいると?」
「悪いかよ」
本来の目的は違ったが、今は本気で騎士になりたいと思っているし、今その道が途絶えそうで本気で悔しいと思っている。この気持ちは嘘ではない。
「……なぜだ」
「は?」
「なぜ騎士の道を目指す」
隠すことでもないので私は正直に答えることにする。
「向こうの世界でも小さな頃から『剣道』って剣術を習ってて、この世界でも自分の力を試してみたかったから」
「お前には聖女の力があるだろう」
「聖女の力は反則みたいなものだし。まぁ、その力で男にはなってるけど、自分の力で騎士になりたいと思ったんだ」
「……それも、やはり聖女の力なのか?」
ラディスが私の身体を見ながら言った。
私も自分の身体を見下ろし頷く。
「ああ、凄いよな。どこからどう見ても完璧な男だろ?」
「元の姿に戻ってみろ」
「……わかった」
私はふっと一度全身の力を抜いてから心で「戻れ」と念じる。
すると全身が淡く輝きだし、その光が消えたときには元の女の姿に戻っていた。
さっぱりと短かった髪も、元の長い髪に戻っている。



