「マジで良い奴じゃねーか! 俺は感動したぜ!」
「ぐ、ぐるし……っ」
「おいこらトーラに触んな!」
イリアスがそう怒鳴り筋肉隆々な腕から私を救い出してくれた。
げほっと少し咳き込んでいると、イリアスはチンピラ男をマジな顔で睨み上げた。
「お前、トーラを潰す気か?」
「わ、悪かったよ。つい力が入っちまって。――そ、そういうわけだから、これからもよろしく頼むな。トーラ!」
「あ、ああ」
イリアスから逃げるように仲間とともに行ってしまったチンピラ男を見送って、私はふうと息を吐く。
周囲にいた奴らもほっとした表情だ。
イリアスだけがふんっと鼻息荒くまだそちらの方を睨みつけていて、私はその背中をぽんと叩いた。
「ありがとな。でも、お前も熱くなり過ぎだし」
「だってよ……」
ぶすっとした顔でイリアスが何か言いかけたそのときだ。
「でもさ、あの聖女様がまさか魔女だったなんてなぁ……」
誰かのため息混じりのその一言で、一気にその場にいた皆が俯いてしまった。
「見事に騙されて、俺等バカみたいだよな……」
みんなあんなに彼女に憧れていたのだ。
それがまさか魔女で、皆を呪おうとしていただなんてそりゃショックだろう。
「本物の聖女様は、一体どこにいるんだろうな」
そんな声が聞こえてきてギクリとする。
「聖女様がいたらさ、呪いなんて簡単にパーっと治してくれたんだろうし」
(簡単にパーっとってわけにはいかなかったけどな……)



