そしていつも私を嘲笑っていたチンピラ男が、真面目な顔で言った。
「これまでお前にしてきた非礼を詫びてぇ。本当に悪かったと思ってる。殴ってもらっても構わねぇ。いや、むしろ気が済むまで殴ってくれ」
「いやいや、殴らねーよ! そこまで酷いことされてないし!」
私は慌てて答える。
確かにムカついてはいたけれど、何も殴るほどではない。
「いや、それじゃあ俺の気が済まねぇ。気にせずやっちまってくれ」
「いや、だから」
「んじゃーさ、代わりに俺が殴っていいか?」
「は?」
そう言って私たちの間に入ってきたのはイリアスだ。
「トーラからちらっと話聞いてムカついてたんだよなぁ。お前かぁ、トーラ突き飛ばしたり嫌がらせしてた奴ってのは」
イリアスが怖い笑顔でバキバキ指を鳴らしながら言うと、流石のチンピラ男も顔を引き攣らせた。
チンピラ男の方が図体はデカいが、彼はまだ私と同じ見習い。正式な騎士となったイリアスのことをちゃんと上に見ているのだろう。
私は慌てて止めに入る。
「イリアス! ほんとにもう全然気にしてねーから! こんなとこ団長にでも見られたらお前もヤバイだろ!? いいって、この話はこれで終わり。な!?」
イリアスを宥めつつ、私はチンピラ男に笑顔で言った。
「お前もさ、友達が無事で本当によかったな!」
「トーラ、おめぇ……っ」
チンピラ男が急に目を潤ませ顔を赤くしたかと思うと、いきなり凄い力で抱きしめてきてビックリする。



