「野盗ごときでピーピー泣いていたお前が騎士になどなれるはずがない」
「あのときは色々突然過ぎてちょっとパニックになっていただけだ!」

 そう声を上げてからハっとする。
 ふん、と奴が馬鹿にするように鼻を鳴らした。

「認めたな」
「ぐっ……」

 奥歯を噛む。
 思い出したくもない失態を蒸し返されて思わず素が出てしまった。

 しかしこれではっきりした。
 怪しい人物全員に声をかけていたわけではない。こいつは私の正体をわかった上で私をこの場に呼び出したのだ。

「……なんで、わかったんだ」

 敬語で話すのが急に馬鹿らしくなった。

 バレてしまった以上、やはりこの寄宿舎から追い出されるのだろうか。
 折角一年ほど頑張って来たのに、一度も試験に受からないまま終わりなのか。

「質問をしているのはこちらだ。城に入り込んで一体何を企んでいる」
「……聖女が騎士を目指したらいけないのか」

 睨みつけながら言うと、ラディスの片眉がぴくりと跳ねた。