「でも、言えなかったんだろ?」
「え?」
イリアスは優しく笑っていた。
「確かに医術のことを魔術みたいで怪しいって言う奴もいるけどさ、そんな考えもう古いんだよ。俺、そんなことでお前のこと嫌ったりしねーし」
それを聞きながら、そういうものなのかと知る。
(ラディスの奴、その辺のこともっと詳しく教えといてくれよな……)
こちらの世界ではそれが常識なのかもしれないが、話を合わせるのにハラハラした。
「むしろ、言ってくれたら俺だって団長みたいに色々看てもらいたかったぜ」
そこでやっと合点がいった。
(そっか。ラディスが私に目を掛けているのは医術目当てだったってことにしたわけか)
確かに、それなら皆も納得したかもしれないけれど。
「いや、でも医術の心得って言っても、そんな大したことは出来なくて。昨日の呪いはホント偶然、運よくうまく行ったっていうか」
「でもすげぇよ。お前がいなかったらうちの騎士団ヤバかったわけだろ?」
「ま、まぁ……」
「なのに俺、昨日お前に酷いこと言っちまって……」
「え?」
イリアスが気まずそうに私から視線を逸らした。



