耳元で囁くようにお願いされて、身体がブワッと熱くなる。
「これが、一番の癒しだ」
そんなふうに言われたら断れるわけなくて。
それに。
(やっぱり、実は相当参ってるんだろうな……)
私はぎこちなく彼の背中に手を回した。
「お疲れさま」
「……お前も」
そうして、私たちは少しの間そのまま互いの隙間を埋めるように抱きしめ合った。
……確かにこれは癒される。
人とハグをすると脳内から幸せを感じる成分がたくさん出ると聞いたことがあるけれど。
(あー、こういうちょっとした向こうの知識が一応医術の心得があるってことになるのかな)
そんなことを考えていると、ふっと腕が緩んだ。
「そろそろ行かなくては。お前はどうする? もう少し休んでいるか?」
「いや、私ももう行く。イリアスの奴も心配してると思うし」
心配というより、不審がっているかもしれないけれど。



