そんな顔でそこまで言われたら頷くしかなかった。
 大事に思われていることがわかって嬉しかったのもある。それと。

(ちょっと可愛いとか、思ってしまった)

 イリアスにはまた嘘を吐き続けることになってしまうけれど……。


 ――と、そのとき彼の目元に酷いクマが出来ていることに気がついた。

「もしかして、昨日から寝てないのか?」
「え? あ、ああ。後始末諸々と報告を済ませて部屋に戻ってきたのがつい先ほどだ。この後また城に戻らねばならんしな」

 そうだ。
 彼は騎士団長で、危機が去ったからと言ってハイ終わりではないのだ。

「少しでも眠った方が良くないか」
「このくらい大したことはない」

 本当に平気だろうか。
 確かに体力は私なんかよりずっとあるだろうけれど。
 でも、昨夜仲間が何人も死にかけたのだ。
 急に彼のメンタルの方が心配になった。

「そうだ。私が癒やしてやるよ!」
「は?」

 私は彼の手に自分の手を重ねた。
 人を癒すなんて実は試したことはないけれど、昨日呪いを解くことが出来たのだ。
 癒すことなんて簡単に出来る気がした。

 なのに、ラディスは首を振った。

「いや、いい」
「なんで」
「お前はしばらくあまり力を使わない方がいい」
「でも」
「そのかわり、」
「え……っ」

 ぐいとその手を引かれたかと思うと、そのまま抱きしめられた。

「しばらくこうさせてくれ」