そうだ。
 昨夜、私はラディスとふたりで解呪に奔走した。
 傍から見たら、なんでただの騎士見習いのあいつが団長と? となるのは当然だ。
 それに、ラディスとの例の噂もある。
 今だって自室には戻らず、こうしてラディスの部屋にいるわけで。

「そこでキアノスと考えたのだが」
「副長と?」

 そういえば副長にはもう私が聖女だとバレているのだ。

「トーラには実は医術の心得があることにした」

 一瞬、話に付いていけなくて思考が停止した。

「……は? 医術? あることに「した」って……」
「昨夜、解散前に皆にそう説明した。だから手伝ってもらったのだと」

「はあ!?」 と思わず大きな声が出てしまった。

「いやいやいや、私そんな、医術の知識なんて何も持ってないけど!?」
「勿論ハッタリだが、解呪の力や怪我を治す力があるのは事実だろう」
「それは、そうだけど」
「それに、昨日お前のいた異世界の話を聞くに、この世界よりも随分と文明の進んだ世界のようだ。俺たちの知らない知識を持っているのも確かだろう」
「そ、そうかもしれないけど、でも医術なんて……」
「それが、一番皆が納得する答えだと判断した。勝手にすまない」
「……」

 確かに、皆にはキアノス副長のように全てをバラすことはできないけれど……。