「だが、お前には随分と負担をかけてしまった。すまない」

 今度は頭を下げられて私はぶんぶんと両手を振る。

「いやいや! 昨日はちょっと気が抜けただけで、今はもう全然平気だし!」

 しかしラディスは信じていないようで眉を寄せた。

「本当か? 無理はしていないか?」
「大丈夫だって! 皆が無事で本当に良かったし、それに、これでフェリーツィアに勝てたことになるしな!」

 ぐっと拳を握りしめ笑うと、ラディスは目を丸くしてからふっと相好を崩した。

「お前らしいな」
「だって悔しいだろ。あいつの目論見通りになるのは。それで、あいつの行方は?」

 ラディスは首を振った。

「門番が言うには、キアノスが倒れる少し前にすぐに戻ると言って城を出たそうだ。下手に追って他に仲間がいるとも限らないからな。悔しいが今は何も出来ん」
「そうだな……」

 相手は特別な力を持った『魔女』だ。
 それにバラノスに現れた魔女の件もある。仲間はいると考えた方がいい気がした。

「だが、このままで済ますつもりはない」

 その緑の目に静かに怒りの炎が揺らめいていて、思わずごくりと喉が鳴ってしまった。

(そりゃ、怒るよな。仲間が皆大変な目に遭ったんだから……)

 と、そんな私に気付いたのか、ラディスが話を変えるように言った。

「それよりお前の、トーラのことだが」
「トーラの?」
「昨夜の一件で、流石にお前に疑念を持った者が多くいると思う」
「!」