呪いは完全に消え去ったみたいだ。
 そして、イリアスは次いで私を見下ろした。

「トーラ……?」

 その目には戸惑いの色がありありと浮かんでいて、これはどっちの反応だろうかと私はとりあえず苦笑いを浮かべた。

「イリアス、大丈夫か?」
「え? えっと、俺、一体何を……?」

 私たちを交互に見つめ首を傾げたイリアスを見て、これは全部覚えていなさそうだと胸を撫でおろす。
 でも同時に、またこのまま彼を騙し続けることになるのかと複雑な思いがした。

「お前は魔女の呪いに侵されていたんだ」

 ラディスがベッドから立ち上がりながら冷たく言い放った。
 イリアスが目を瞬く。

「魔女の、呪い?」
「そうだ。聖女からお守りを受け取っただろう」
「え? あ、はい……」

 私をちらりと見ながらバツが悪そうに頷くイリアス。

「あの女は聖女ではなく実は魔女で、お前が受け取ったものは呪いの媒体となるものだ」
「!?」

 イリアスが目を丸くした。

「そして、お前はこのトーラを殺そうとした」
「なっ!?」
「お、おいっ」

 イリアスがショックを受けたようにこちらを見下ろし私は慌てた。

(言わなくてもいいことを……!)

 ラディスを睨みつけるが、彼はこちらを見てはいなかった。