ラディスが心配そうに私の名を呼んだ。
――でも、ラディスが私が本物の聖女だと言ってくれたから。
彼が信じてくれたから、私も信じられるようになった。
私はそこでもう一度橘藤花の姿に戻った。
「でも、私が別の世界から突然この世界にやって来てしまったのは紛れもない事実です」
するとキアノス副長は目を細めた。
「聖女は異世界から現れる、か。君がいた世界とは、どんなところだい?」
「えっ」
予想外の問いに戸惑う。
(どんなところ……?)
のほほんと生きていただけなので、改めてその世界のことを説明しろと言われると難しい。
「えっと、私が住んでいたのは日本という国なんですが……なんといったらいいか……この世界と比べると色々なものが便利? です」
「へえ? 例えば?」
まず頭に浮かんだのはスマホだった。
「スマホと言って、こんな小さくて薄い機械で遠く離れた人と会話が出来たり、ゲームが出来たり、動画が見れたりします」
今ここに現物があったらどんなにいいかと思いながらジェスチャーを交えながら説明する。



