キアノス副長は眉を寄せ怪訝な顔をした。

「本物って……なら、」
「あのフェリーツィアという女は偽物だ」

 副長は絶句したように言葉を詰まらせた。
 そんなキアノス副長にラディスは頭を下げる。

「すまない。そうとわかっていてお前に世話を任せてしまった」
「……なら、彼女は一体」

 顔を上げ、ラディスは嫌悪感を露わに答える。

「あの女は、おそらく魔女だ」
「魔女……そうか、それで呪い」

 合点がいったように呟き、キアノス副長はもう一度私の方を見た。
 
「トーラ、いや、藤花の方が本物の聖女だと断言出来る、その根拠は?」
「え……」

 緊張が走る。
 男に変身しただけでは信じてもらえなかったみたいだ。
 しかし、そりゃそうだと自分で思った。

(だって、誰がどう見たってフェリーツィアの方が聖女様っぽいし)

「今、目の前でその力を見ただろう」

 ラディスがそう言ってくれる。でも。

「それこそ魔女の幻術かもしれない。藤花の方が魔女で、君が騙されている可能性はないのかい?」
「キアノス、お前……っ」

 一気に険悪なムードになってしまい私は慌てた。

「私も、自分が聖女だなんて未だに信じられません」