「……トーラって、」
「トーラ・ターナー。騎士見習いのだ。お前も知っているだろう」
「や、彼のことは勿論、知っているけれど……え?」

 そりゃ、そんなこと言われたって普通は信じられないだろう。
 なんだか申し訳なくなってきて、私は思い切って頭を下げる。

「本当の名前は橘藤花って言います。これまで騙していてすみません!」

 しかし当然ながらキアノス副長はまだ理解できないようで、戸惑うように額をおさえた。

「……ごめん、ちょっと、意味が……」

 ラディスは息を吐いてこちらを見下ろした。

「見たほうが早いかもしれん。行けるか?」
「た、多分……」

 先程変身出来なかったので少し不安だったが、深呼吸ひとつして私はいつものように目を瞑り集中する。
 すると、間もなくしてキアノス副長が息を呑むのがわかった。
 目を開けて、自分の手や腕が男のそれになっていてほっとする。

「……本当に、トーラだ」

 呆然と、キアノス副長が呟くのが聞こえた。