「そ、そうか? そんなに似てないと思うけどな」

 内心冷や汗を流しながら答えると、ザフィーリはふっと笑って私から視線を外した。

「そういうわけだから、一応、君には報告をと思ってね。じゃあ、失礼するよ」

 そうして背を向け歩き出したザフィーリに私は声を掛ける。

「ザフィーリ」
「なんだい」
「その、……元気、出せよな」

 すると奴は振り返らずに答えた。

「ありがとう」

 ザフィーリが見えなくなってしまってから、私はひとり溜息を吐いた。

(一件落着、かな)

 でも、元は私の不注意が招いたこと。
 ザフィーリには本当に悪いことをしてしまった。

(失恋って、辛いんだろうな……)

 厩舎の方に戻りながら考える。
 私は今の恋が初めてだから、勿論失恋もまだしたことがない。
 ラディスが私のことを嫌いになったり、他の子のことを好きになったと考えたら、やっぱりそれだけで胸の辺りがモヤモヤとしてきた。