トーラの姿に戻ってから急いで厩舎へ向かうと、案の定先輩騎士に遅いと怒られた。
 でも腹が痛くてトイレにこもっていたと話したら意外にもあっさりと許してもらえた。
 どうやら私があのチンピラ風の奴らに絡まれたことを誰かから聞いたようで、「あいつらには厳重注意しておいた」と言われた。
 あいつらに絡まれたせいで私が腹を痛めたと思われたということで、それはそれでなんだか癪だったが、それで納得してもらえたならと特に否定はしなかった。

 そして、その夜のことだ。

「腹の具合はもういいのか?」

 食堂でイリアスに訊かれ私は笑顔で頷いた。
 今日の夕飯はパンと具沢山ミルクシチューだ。

「もう大丈夫。昼間は悪かったな。折角誘ってくれたのに」

 するとイリアスは首を横に振ってから言いにくそうに続けた。

「なんか、お前今日ザフィーリに助けられたんだって?」
「!?」

 シチューを口にした途端に言われ、危うくむせそうになった。

(噂広がるの早すぎだろ!?)

 そんな私の反応を見て、イリアスは不機嫌そうな顔をした。

「気をつけろって言ったろ?」
「や、マジでいきなり過ぎて何も出来なかったっつーか」
「何されたんだよ」
「いや、ただ背中押されてすっ転んだだけ。別になんともなかったから」
「じゃあ、やっぱ昼間泥だらけだったのって……」
「あー、うん、実はそう」
「んだよ、そうならそうと言えよ。そしたら俺だって何か出来たかもしれねーのに」