「勿論。帰りも飛んで帰らないと」
「こんな昼間に、誰かに見られでもしたらどうする」

 怒るように言いながらラディスもベッドから降りた。

「でも、時間が」
「俺が用事を頼んだことにすればいい」
「だから! そういうのが噂の元になるんだって!」

 バタバタと足を踏み鳴らしていると、ラディスは言った。
 
「せめて途中まではイェラーキに乗っていけ。あいつは速いぞ」
「えっ」

 その魅力的過ぎる誘いに、私はピタリと足を止めた。


 階下に降りると、その足音を聞きつけたように女将さんがパタパタと厨房の方から現れた。
 そして私たちを交互に見つめ心配そうに言った。

「随分と揉めていたようだったけど……」

 私の怒鳴り声が聞こえていたのだろう。
 恥ずかしくなって私は頭を下げた。

「ごめんなさい! 煩くしてしまって」
「いや、今他のお客は皆外出してるしいいんだけどさ。もう話は済んだのかい?」
「はい!」

 私が頷くと女将さんはほっとした顔をした。
 
「ならトーカ、この後時間があるなら少しゆっくりしていかないかい。久し振りじゃないか」
「あ……ごめんなさい、時間なくて」
「そうなのかい?」

 残念そうな女将さんの顔を見て私は言う。

「でもまた絶対、近いうちに来ますので!」
「そうかい? じゃあ、そのときの楽しみにとっておくよ」
「はい! あ、それと……」